読み込み中...

the band apart「Eric.W」──交差する言葉と旋律が描く”曖昧な青春”

2025.7.26

#the band apart#ライナーノーツ#レコメンド#曲紹介

どうも、音文学管理人の池ちゃんです。暑い夏がやってきて、夏フェスの時期にも差し掛かってきたのではないでしょうか。かつて友人から「the band apart」の曲を紹介された時に衝撃が走り、YouTubeで「the band apart」のフェスの動画を見漁っていた頃を思い出します。さて、そんなthe band apartと「Eric.W」という楽曲をご紹介したいと思います。

ちなみに、本記事の一個前の記事では山下達郎さんの「Sparkle」という曲を取り上げております。良かったらそちらも併せてご覧ください。記事はこちらから。

「Eric.W」とはどんな曲か?

「Eric.W」は様々なアルバムに収録されていますが、個人的に好きなのは有名なアルバムでもある2009年にリリースされた「K.AND HIS BIKE」に収録されたものが好きです。このアルバムで収録されたテイクが個人的にはベスト盤かなと思います。勿論このアルバムでも「顔」的な存在に「Eric.W」はなっていると思います。

タイトルに人の名前があるので、聴き手は何か個人的な物語を想像しがちですが、曲の中では「Eric」や「W」」という人物について明示される事はありません。むしろ、英語詞を中心とした抽象的なリリック、乾いた質感のギターリフ、そしてタイトに構築されたリズムセクションによって、”名も無き青春の断片”を感じさせる構成になっています。

その曖昧さと濃密な音像が、この曲を唯一無二のものにしています。

the band apartで用いられるサウンドの構造とジャンルの横断的な魅力

Eric.Wに展開されるタイトで柔らかいリズム構成

the band apartのサウンドの特徴としてよく挙げられるのが、ジャズ、ファンク、パンク、エモなど多ジャンルを自然に横断する楽曲構成です。「Eric.W」でもそれは顕著です。タイトに刻まれるドラムと、跳ねるようなベースラインが心地よいグルーヴを生み出しながらも、決して単調になりません。

Erc.Wにおけるギターの多層的な使い方

この曲のギターは、単なるメロディやバッキングの役割に留まらず、空間を彩る一つの「環境音」のような役割を持っています。イントロのリフはシンプルながらも癖になるフレーズで、恐らくそこには僅かなコーラスやディレイ処理が加えられ、まるで記憶の中の風景のぼやけたような輪郭を作りだします。

Eric.Wのイントロにかけてベースとギターの掛け合い

なんと言っても一番聴いていて痺れる部分としては、イントロのベースラインとギターの掛け合いです。本楽曲のモチーフともなっているイントロのギターリフですが、そこからリズム隊(ドラム・ベース)が入って来ますが、ベースラインが恐ろしいぐらい動きます。そして凄いのがギターとベースラインの音がぶつからないのです。YouTubeで探したところ、ベースに特化した動画ありましたので、共有させていただきます。

イントロですが、えぐい動き方をしていますよね。恐らく、ジャズのエッセンスが入っているのではないかなと思います。ギターのコードもテンションノートが沢山入っていて、音がぶつかる危険性はかなりあるかと思いますが、ここまでギターとベースがマッチするのも高い技術を持っているなと思いました。

the band apartの歌詞の読み解き──Ericとは誰か?

Eric.Wは何者──英語詞の持つ匿名性と開かれた解釈

the band apartの多くの楽曲同様、「Eric.W」も全編英語詞で綴られています。そのことが、聴き手によって多様な解釈を許す土壌を作っています。例えば「I’ll take you on, Eric」や「Don’ you lie, W」などといった直接的な台詞があれば、想像の手掛かりになるかもしれませんが、そういった明確な描写は一切登場しません。

むしろ、詩的なフレーズが断片的に並ぶことで、聴き手は自分自身の「Eric.W」を心の中に作り上げる事ができます。青春の記憶、別れた友人、失った恋人──そういった存在を「Eric.W」に重ねる事ができるかもしれませんね。

Eric.Wという名前が持つ「記号」としての役割

「Eric」という名前に明確な由来があるわけではありませんが、それが逆に記号性を強めています。Wというアルファベットも、頭文字なのか、苗字なのか、それともコードのようなものなのか。the band apartというバンドはその意図を明かしていません。

これは恐らくではありますが、the band apartというバンドが大切にしているのは、説明ではなく”余白”だと思います。だからこそ、この曲の主人公(あるいは対象)が「Eric.W」と名付けられた時点で、そこに込められた意味は聴く側に委ねられたのではないでしょうか。

Eric.Wのリリース背景とアルバム内での位置づけ

「K.AND HIS BIKE」という作品の中での役割

「Eric.W」が収録されたアルバム「K.AND HIS BIKE」は、the band apartの中でも非常に完成度が高く、バンドとしての方向性が明確に打ち出された作品だと思っています。確か前作EPである「Eric.W」というEPがありますが、こちらのバージョンよりも「K.AND HIS BIKE」の方が個人的には演奏隊の音作りが完成されていると思います。EP版と比べてアンサンブルの精度、録音のクオリティ、そしてリリックの温度感まで細やかに調整され、バンドとして一段階成熟した印象があります。

「Eric.W」は、その中でも特にメロディのキャッチ―さと、サウンドの実験性が共存した1曲として、リスナー耳に残りやすい楽曲です。

Eric.W──ライブ定番曲としての顔

この曲は、リリースから20年近く経った現在でもライブで演奏される事の多い楽曲です。私はライブ映像はYouTubeでしか見た事がありませんが、イントロが始まるだけで歓声が上がるほど、ファンの間では「the band apartを象徴する楽曲」として愛され続けています。

スタジオ録音では抑制されていたアンサンブルが、ライブではダイナミックに爆発する。そのギャップもまた、「Eric.W」の魅力の一つです。

まとめ──Eric.Wは、記憶の名前である

the band apartの「Eric.W」は、単なるロックナンバーではありません。そこには、具体性を捨てたからこそ生まれる普遍性があり、言葉にできない感情をギターリフやグルーヴに託した美しさがあります。

Ericとは誰か?Wは何を意味するのか?──その問いに明確な答えを求めるよりも、自分の中の「Eric.W」を探すこと。これこそが、この曲と向き合う正しい姿勢なのではないでしょうか。

曖昧で、でも確かに誰かの胸の奥に残る一曲。時が経っても色褪せず、むしろ深みを増していく名曲だと思います。余談ですが、the band apartは2018年に「20years」という曲をリリースしています。こちらはイントロに4つ打ちのドラムが入っているバージョンで、より一層イントロの「あのリフ」が登場するまでの高揚感が高まったバージョンですので、併せてお聞きください。

この記事でthe band apartに出会った方もいらっしゃるかもしれませんので、最後にthe band apartの公式サイトのリンクを載せておきます。ライブ出演等の詳しい情報はこちらから。

コメントはこちらからどうぞ

コメントはこちらで承認の作業を行うまでは表示されません。ご了承ください。