
20年前の名曲、HALFBY「Rodeo Machine」について考える──ビート・ワンダーランド
皆さんお久しぶりです。音文学管理人の池ちゃんです。長らく更新が止まってしまい、申し訳ございません。プライベートがバタバタしてしまい、更新が出来ずにいました。今後は再度コンテンツを作ってまいりますので、よろしくお願いいたします。
さて、今回お届けする曲は20年前にリリースされた名曲「Rodeo Machine」についてです。私も過去この楽曲については、インターネットで聞いた事があるのですが、早いもので20年前のトラックである事に衝撃を覚えました。しかしながら、久しぶりにSpotifyで聴きましたが非常に洗練されたトラックで、名曲はいつまでも廃れる事無く名曲なんだなと思いました。そんな楽曲を今回は紹介したいと思います。
ちなみに前回紹介した楽曲はKMNZで「VR」です。解説記事はこちらからどうぞ。
目次
HALFBYとは?
まずは、今回のメインアーティストであるHALFBYについてインターネットの海の中から検索してみました。HALFBYは読み方としては「ハーフビー」と呼ぶそうです。初めてインターネットで見た時は「ハーフバイ」かな?と思っておりましたが、正しくは「ハーフビー」だそうです。
HALFBYはDJや音楽プロデューサである高橋孝博さんによるソロプロジェクトだそうです。2000年代初頭の日本のクラブミュージックシーンを支えた立役者とも言えるようです。私もSpotifyでHALFBYさんの楽曲を沢山聴かせて頂きましたが、2000年代初頭リリースの音源はどれも「ハマったな」という感覚があり、どの曲も耳に残るものでした。
HALFBYの音楽的な魅力として、ジャンルに縛られないユニークなビート感覚と、レコード盤を彷彿とさせるレトロ感×ポップなムードを同じ一つの楽曲で同居させている点がとても面白いところだと思っています。本来音楽をジャンルで分類する事はナンセンスであると私はどことなく思っていますが、まさに「音楽はジャンルレスでいいのではないか」という強いメッセージ性すら感じる楽曲に仕上がっていると思います。
「Rodeo Machine」の楽曲構造とジャンルのミックスについて
「Rodeo Machine」はSpotifyで調べてみると、2005年リリースのフルアルバム「Rodeo Machine」のタイトル・トラックであり、今もなおHALFBYの代表曲の一つとなっています。個人的にサウンドの特徴は前述したジャンルレスな感じで、結構どんなジャンルでも当てはまると思います。
例えば、ヒップホップやブレイクビーツがこの曲の要素になっていますが、ラテンやカントリー、更にはソウルやボサノバ、ファンクのような要素も散りばめられています。個人的にはラテンの要素が強めに入っているような気がします。踊りだしたくなるような楽曲の世界観はここからきているのではないかなと思いました。
さらに特徴的なのはローファイである点です。これは個人的にnujabes等に代表されるローファイトラックに近しいものを感じます。ただ、このアルバムがリリースされたのが2005年であると考えると、ローファイ・ヒップホップのようなジャンルの確立は当時はされていないのではないかなと思います。そのため、当時「Rodeo Machine」は懐かしいサウンドではあるけれども、最先端の音楽だったのではないかと思います。
ちなみに本楽曲はいわゆる「声ネタ」が沢山入っています。サンプリング元は調べましたが、わかりませんでしたが、インスツルメントと声ネタのギャップが個人的には効いているのではないかと思います。過去沢山の曲がリリースされている音楽の世界で、様々なサンプリングが使われていると推測します。そういう側面を見てみると、HALFBYの音楽的知見の深さが伺えるのではないでしょうか。
遊び心満載のサンプリング術──”音のコラージュ”としての楽曲の魅力
「Rodeo Machine」は一見すると単純な素材のループとも捉えられます。ただ、それはぱっと見そうであるという事がこの楽曲での注目すべき点です。HALFBYここで、いわゆる音素材と呼ばれているものを「演奏」しているような極めて巧妙な構成力を発揮しているのではないでしょうか。

上記の図のように、Rodeo Machineは声ネタ×異国情緒×ブレイクの妙がうまく融合して一曲の中にまるで”映画のような場面転換”をもたらしていると言えます。途中途中でメインの旋律からBメロディのような展開になるところがあると思います。Rodeo Machineというタイトルからも想像がつくように、まるで架空の映画やサーカスを舞台にしているような感覚もあります。個人的にはサーカスの世界観が一番しっくりきます。
そのサーカスのような感覚を彷彿とさせているのは、サンプリングにおける「引用のセンス」だと思います。サンプリングはいわゆる引用でありますが、このサンプリングのセンスが他のアーティストにはない唯一無二のものだと私は考えます。恐らく昔流行ったり、どこかで聞いた事のある曲をサンプリングしているのだと思いますが、単なる懐古ではなく”遊び心と創造”でサンプリング元の楽曲を再構築・再解釈するいう中々他に類を見ない考え方で楽曲を制作しているのではないでしょうか。
Rodeo Machineというタイトルについて
ここからは私の想像でお話する事となりますが、今回紹介している曲名──Rodeo Machineという曲名は何を意味しているのでしょうか。Rodeoといったら、馬を手なずける競技のようなものだったはずです。Machineは機械──すなわちメカニック要素があります。それを繋げてRodeo Machineとなる訳ですが、恐らく乗馬マシンの事を指しているのではないかと推測します。曲の冒頭に馬の鳴き声が入っていて、一定のテンポで曲が進行していく。それを合わせると、まさにロデオマシンに乗っている人の感情の揺れだったり、変化を曲にしているのではないでしょうか。
想像してみるだけでも楽しそうですよね。ロデオマシンに乗ってこの曲を聴くと、まるで西部劇の登場人物にでもなった気分になると思います。曲調とRodeo Machineという題名はマッチしていると思います。
20年経った今振り返るRodeo Machineが現代のミュージックシーンに与えた影響力と価値
個人的に思うのですが、2005年はエレクトロポップやダンスミュージックやサンプリングベースの楽曲のある意味黄金期だったのではないかと思います。2005年といったらnujabesさんのModal Soulなどがリリースされた年です。個人的にはサンプリングを駆使した楽曲が多く生まれた時代とも言えると思っています。そんな中HALFBYが出したRodeo Machineも現代の音楽シーンに多大な影響を与えたと思います。
Rodeo Machineの特徴として下記が挙げられます。

完全なバンドミュージックではないところはHALFBYの特徴だと言えます。パーカッションの部分は寧ろクラブ寄りのダンスミュージックのようなアプローチがされています。ただ、楽曲全体の側面としてはどことなくラテン調のような気がします。この絶妙な塩梅が面白いところです。
また、聴き手を選ばない点も大きな特徴ではないでしょうか。Rodeo MachineはGoogleで検索してもらっても分かる通り、ニコニコ動画で「中曽根オフ」という名称で親しまれています。これは黎明期のニコニコ動画を盛り上げた立役者とも言えます。ニコニコ動画で人気になったという事は即ち、コアなファンだけではなく大衆に受けた楽曲であると客観的に言えると思います。
また言語化が難しいのですが、Rodeo Machineのニュアンスは現代のtofubeats等にも通ずるものがあるのではないかと思います。HALFBYのエレクトロな部分がそれを象徴している気がします。変化の多いリズムパターンや、軽快なテンポ感は現代音楽のDNAとしてしっかりと引き継がれていると思います。
まとめ──HALFBYが作り出した枠をはみ出した自由なビートの感動
ここまで長々と読んでいただきありがとうございます。最後にまとめになります。「Rodeo Machine」はクラブ音楽とアコースティック音楽が融合し、ジャンルを超越したものになっていると思います。「音楽って自由なんだな」と思える楽曲になっているのではないでしょうか。Rodeo Machineは声素材などは恐らくサンプリングかと思いますが、サンプリングのユーモアだったり愛が入っているなと思います。
HALFBYが作り出した名曲「Rodeo Machine」はリリースから20年が経ちましたが、これからもリスナーの心を躍らせ続ける事でしょう。本日はここまで。読んでいただきありがとうございました。
HALFBYの公式サイトを最後に載せておきます。最新の情報はこちらからどうぞ。

音文学管理人。TSUJIMOTO FAMILY GROUP主宰。トラックメイカーでもありながら、音文学にて文学的に音楽を分析している。年間数万分を音楽鑑賞に費やし、生粋の音楽好きである。また、辻本恭介名義で小説を執筆しており処女作「私が愛した人は秘密に満ちていました。」大反響を呼び、TSUJIMOTO FAMILY GROUPの前身団体とも言えるスタジオ辻本を旗揚げするまでに至っている。