恋も自己肯定感も、全部歌に変えて──超ときめき♡宣伝部「こんなあたしはいかがですか」
今日は皆さんいかがお過ごしでしょうか。個人的にはゆったりとした休日を過ごせてとてもリラックスできています。ポップスの楽曲紹介があまり出来ていなかったので、個人的に好きなアイドルの紹介を連続でしていきたいと思います。今回は最近人気急上昇中のアイドル「超ときめき♡宣伝部」のアップチューン「こんなあたしはいかがでしょうか」を紹介したいと思います。
ちなみにですが、前回はでんぱ組.incの「絢爛マイユース」について紹介しています。良かったら併せてご覧ください。前回記事はこちら。
目次
はじめに──自己肯定をエンタメに変えるアイドル
アイドルという存在は、「理想の姿」を体現しながらも、同時に「等身大の自分」も見せる稀有な表現者です。
2024年にリリースされた超ときめき♡宣伝部の「こんなあたしはいかがですか」は、まさにそんなアイドル性の両面を詰め込んだ傑作だと私は思っています。「好きな人にどう思われているんだろう」「こんな自分じゃだめかな」──そんな葛藤を抱える少女の視点を、圧倒的なポジティブさとキャッチ―なメロディーに包みながらリスナーの心にダイレクトに届けてくれる一曲となっています。
楽曲の概要と背景
超ときめき♡宣伝部の”今”を象徴する一曲
本楽曲は、超ときめき♡宣伝部の活動10周年イヤーにあたる節目に発表された重要なナンバーだと思っています。メンバーたちは「ときめき♡」を軸に、青春、恋、日常のきらめきをアイドルポップとして昇華してきましたが、「こんなあたしはいかがですか」は、その中でも特に”自己肯定”を全面に打ち出した意欲作と言えると思います。
楽曲のプロデューサはコレサワさんが担当しています。コレサワさんは近代のJ-POP業界では欠かせないアーティストだと思います。この楽曲のポテンシャルが高いのはプロデューサーの実力と超ときめき♡宣伝部の相乗効果だとも考えられます。
超ときめき♡宣伝部歌詞の世界観
「こんな私じゃだめ?」から始まる恋の自己対話
冒頭の歌詞についてこのような一節があります。
君に最初に言っておかなきゃいけないことがあるよ
3分くらいでいいの隣にいてよ
引用元:Uta-Net(こちら)
この一節で、リスナーは一瞬にして主人公の中に引き込まれます。意中の人からこのような言葉をかけられたら、アースティスト名通りときめくのではないでしょうか。この辺りのリリックのチョイスはコレサワさんのセンスが光っていると思います。
逆にこの言葉をかける側の心情変化についても考えてみましょう。この言葉を口に出さずとも思っているという事は「好きな人に好かれる自分で居たい」「でも、自信がない」といった心情が窺えます。このような繊細な葛藤を”日常の一コマ”から丁寧に描き始める曲の構成も秀逸です。このリリックは冒頭にあるので、ここから何かが始まるのではないかとリスナーをワクワクさせる事ができるのです。
”君”の存在が自己を照らす
歌詞の随所に登場する”君”の存在は「誰かに認められたい」という気持ちを象徴しているのではないでしょうか。
今回の恋は最高だって 今君に出会えたの
二人の愛が続くようにこれは守って
引用元:Uta-Net(こちら)
このような表現は、恋愛と自己肯定を結びつけながら、思春期のリアルな心情を描いているのではないでしょうか。”君”という他者に向けた感情が、”自分”への赦しへと昇華していく構成が本楽曲の魅力です。
超ときめき♡宣伝部歌詞のサウンド面の魅力
メジャーコードの疾走感とスイングのリズム
「こんなあたしはいかがですか」は、軽やかなテンポとメジャーコード進行によるポジティブな響きが特徴です。Aメロでは、エレピがギターのカッティングのようにコードを刻みます。アクセントにストリングスのピッチカートが入ってきて透明感ある演出がされています。サビでは、コードが一気に広がり、メロディラインが高揚感を呼び起こしています。
コレサワさんによるプロデュースはアイドルソングとしての”かわいさ”と”切なさ”のバランスを保ちつつ、現代的なJ-POPの感覚をしっかりと捉えられているように思います。
フルオーケストラを連想させるアンサンブルの調和
本楽曲はあくまで「J-POP」の枠を超えない範囲で創作されてはいると思いますが、楽器隊の音数の多さはフルオケを連想させる壮大な音楽として成立しているところもアイドルソングとしては珍しいタイプかなと思いました。厳密には一昔前のアイドルソングではなく、令和のアイドルソングとして最先端のアプローチをしている点が非常に興味深いです。
超ときめき♡宣伝部のパフォーマンスと歌声
メンバーそれぞれの個性が物語を深める
本楽曲のボーカルは、パートごとにメンバーの個性が光るように構成されています。中でも「あたし」という言葉に込められたニュアンスの違いが秀逸です。
甘さ、切なさ、そしてどこか強がりな感情──それぞれの声がリスナーの中で”あたし”の輪郭を鮮明に描き出しています。ライブでのパフォーマンスでは、目線、笑顔、振り付け全てが”自己開示”の手段となっており、観客との共感を生んでいます。
「こんなあたしはいかがですか」が持つ現代性
自己肯定感の時代におけるポップソングの役割
近年、自己肯定感というワードが多くの文脈で取り上げられるようになりました。SNS、比較文化、多様性を評価する社会の変容。そうした時代の中で、この楽曲が描く「好きになりたい自分」は全てのリスナーにとって普遍的なテーマであると言えます。ポップスと呼ばれる楽曲の立ち位置は令和になって大きく変わってきています。そんな時代に上手く変化してきた楽曲であると言えます。
アイドルという存在が、ただの”憧れ”ではなく、”一緒に悩んでくれる存在”になっている──「こんなあたしはいかがですか」は、そんな現代的なアイドル像の理想形でもあります。共感や同情といった側面を令和のアイドルでは求められていると思います。もっと大きく言うと、現代の楽曲は共感と同情という感情が大事なものになってくるのではないのでしょうか。
まとめ──超ときめき♡宣伝部は”そのままの私”が誰かをときめかせる
「こんなあたしはいかがですか」は、恋する気持ちと自己肯定感の間で揺れる心を、真っすぐに描いたポップソングだと思います。曲を聴き終わった後、充足感がとてもあるので、自己肯定感を高める楽曲だなと思います。
超ときめき♡宣伝部が届けるこの楽曲は、”変わろうとする自分”ではなく、”今ここにいる自分”を肯定する力を持っています。聴き終えた後、自分を少しだけ好きになれるような、そんな余韻が残る一曲。これからも「こんなあたしはいかがですか」は”誰かの心を抱きしめる”存在であり続けると思います。
最後に超ときめき♡宣伝部のオフィシャルサイトをご紹介しておきます。最新の情報はこちらから是非キャッチしてみてください。オフィシャルサイトはこちら。

音文学管理人。TSUJIMOTO FAMILY GROUP主宰。トラックメイカーでもありながら、音文学にて文学的に音楽を分析している。年間数万分を音楽鑑賞に費やし、生粋の音楽好きである。また、辻本恭介名義で小説を執筆しており処女作「私が愛した人は秘密に満ちていました。」大反響を呼び、TSUJIMOTO FAMILY GROUPの前身団体とも言えるスタジオ辻本を旗揚げするまでに至っている。




