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HINONABE「ころもがえ」ライナーノーツ|季節の変化と心の揺らぎを描くインディーポップ

2026.5.10

#HINONABE#ころもがえ#ライナーノーツ#レコメンド#曲紹介

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HINONABEという音楽──日常を静かに照らすインディーサウンド

近年のインディーズミュージックシーンでは、”大きな物語”よりも”日常の手触り”を丁寧に描く音楽が支持を集めています。これは、私の肌感ではありますが、そのようなイメージが漠然と私の中にあります。そんな最近のインディーズミュージックシーンで、強烈なMVと共に脳天から叩かれたバンドがHINONABEです。Instagramの広告に出てきて、思わずYouTubeで検索したのを覚えています。

まずは、こちらのMVをご覧ください。特に序盤のシーンが強烈に頭に残りました。人がマンションのベランダから飛び降りる。そのシーンを様々な角度や、それを見ている人の表情などが、残酷な程静かに描かれています。私は、この曲は楽曲本体ではなく、MVの印象で虜となり、今回のライナーノーツを書くまでに至っています。

そして、衝撃を受けた後にHINONABEの「ころもがえ」について、冷静になって記事をしたためる事としました。HINONABEは私の中では決して音楽シーン的に新しい事をしている訳では無いと考えています。派手派手しい演出などはありません。

しかし、その代わりに

  • 部屋に差し込む夕方の光
  • 季節が変わる空気
  • 誰かと交わした何気ない会話

このような情景を歌詞の有無に関わらず感じられる楽曲だなと思いましたし、こうした”小さな感情”が丁寧に閉じ込められているなと感じました。

「ころもがえ」は、そんなHINONABEの魅力がとても繊細に表れた楽曲の一つだと考えています。タイトルが示す通り、この曲は”季節の変化”をモチーフにしながら、実際には人の心の移り変わりを描いています。

「ころもがえ」というタイトル──変わる季節、変わる心

衣替えは”生活”の象徴

「ころもがえ」という言葉は、日本人にとっては非常に生活感のある言葉と思います。四季があり、夏服から冬服へ。あるいは冬から春へ。

クローゼットの中身を入れ替える行為は、単なる習慣でありながら、同時に”季節の変化を身体で受け入れる行為”でもあります。この楽曲は、その日常的な行為を入り口にしながら、”人の感情もまた少しずつ変化していく”ことを描いています。この描き方がとにかく見事で、聴いていて飽きを感じさせない設計になっています。

変わりたいのに変われない感情

しかし「ころもがえ」が面白いのは、単純な前向きさだけでは終わっていない点です。

季節は自然に変わっていく。
服も入れ替わっていく。

それでも、人の感情だけは簡単には整理できません。

過去の記憶。
忘れられない言葉。
まだ残っている気持ち。

この曲には、”変わっていく世界”と”変わりきれない心”の対比が静かに流れています。

サウンド分析──浮遊感と生活感が同居するインディーポップ

柔らかなギターサウンド

「ころもがえ」のサウンドでまず印象的なのは、イントロの柔らかなギターの響きです。

過度に歪ませることなく、空気に溶け込むように鳴るギター。その質感が、楽曲全体に穏やかな浮遊感を与えています。このイントロが私は正直一番好きです。ずっとリピートして聴いていたいぐらいです。勿論そこから展開する鮮やかさも好きですが、ずっとピントがぼやけているようなイントロはとても好きです。

これは日本のインディーポップシーンに共通する特徴でもありますが、HINONABEの場合は特に”生活の近くで鳴る音楽”として機能しているように感じられます。

余白を大切にしたアレンジ

この曲では、”鳴っていない空間”、もっと言うと曲の緩急が非常に重要なアレンジポイントだと思っています。音数を詰め込み過ぎず、過度な余白を残すことで、リスナーが感情を投影するシーンが生まれています。

それはまるで、

──静かな午後の部屋で、
──ひとり窓の外を眺めているような感覚。

その空気感が「ころもがえ」という楽曲を特別なものにしています。

歌詞考察──日常の中に残る感情の温度

季節の描写が感情を映す

この曲では、季節の描写が単なる情景ではなく、”感情そのもの”として機能しています。

気温の変化。
風の匂い。
服装の変化。

直接歌詞として描写はされていないとしても、このような描写は音楽を聴いている内に不思議と想像ができてしまいます。このような描写が、MVに出てくる登場人物の心情と重なりながら進んでいきます。

これは日本文学的な感覚にも近く、四季を通して感情を表現する繊細さが感じられます。

”大きな出来事”ではなく”余韻”を描く音楽

「ころもがえ」は、劇的な事件を描く曲ではありません。むしろ、

  • なんとなく思い出してしまう人
  • 季節の変わり目に感じる孤独
  • 少しだけ前に進めた気がする瞬間

そうした”小さな余韻”を描いています。

あれは 春の風のよう
ぬるすぎる 高揚
こんな熱だけだ
ずっと生きづらい
分かっている、知っている
それでいいから
春らしくいさせて
引用元:こちら

これは歌詞の引用ですが、季節は恐らく冬から春へと変わる瞬間を描いていると思います。数々の四季がある中でこのシーンを選んだのは出会いと別れの春だからだと思います。生きづらさを感じた人間が「春らしくいさせて」という感情を吐露するのはどこか苦しく、どこか美しさがあります。更に言うと、途中途中で入るイントロを連想させる静けさは、この歌詞のような生きにくさを表現しているのかもしれません。

なぜ今、「ころもがえ」が響くのか

現代は、情報も感情も消費スピードが非常に速い時代です。

しかし「ころもがえ」は、その流れに逆らうように、”ゆっくりと変化する感情”を描いています。

急に人生が変わるわけではない。
少しずつ、季節のように変わっていく。

その感覚が、この楽曲にはあります。

だからこそ「ころもがえ」は、忙しい日常の中でふと立ち止まりたくなるような音楽として、多くの人に残るのではないかと考えられます。MVの強烈な演出も相まって、まさに今大注目のバンドだと思います。

HINONABEの「ころもがえ」は、季節の変化を通して”人が変わっていくこと”を静かに葛藤と一緒に肯定する、繊細なインディーポップの名曲だと思います。

以上、ライナーノーツでした。前回紹介した記事はこちら。併せてご覧ください!

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