人生とは何かを考えさせられる名曲──ルサンチマンで「老いても」傍に居られる幸せ
皆さんこんにちは。お久しぶりです。音文学管理人の池ちゃんです。最近は何かと多忙な日々を過ごしていて、記事を更新できておりませんでした。最後に更新して半年ほど経ちましたが、相変わらずSpotifyを愛用して、色んなアーティストの新譜を聞いていたので、その紹介をしていこうと思います。
最近ビビッと来ているアーティストが居ます。それが「ルサンチマン」というアーティストです。ルサンチマンは2018年に東京で結成されたバンドで、個人的に最近有名になりつつあるなと感じているアーティストです。
そんなルサンチマンの中でも特に個人的に名曲だなと思っている「老いても」という楽曲について、今回は深堀りしていこうと思います。
目次
ルサンチマンというバンド──”生きづらさ”を鳴らす現代のインディーロック
まずは、公式のYouTubeにアップロードされている楽曲をお聞きください。これはどの時代でも言える事ですが、日本のインディーロックには、時代ごとに”若者の空気”を記録するバンドが現れます。それは怒りだったり、孤独だったり、あるいは説明しきれない焦燥感だったりします。
ルサンチマンというバンドもまた、そうした”現代の感情”を音楽として鳴らしている存在です。
彼らの音楽には、過剰な装飾がありません。とても素朴なサウンドに仕上がっています。むしろ、不器用なまま剥き出しになった感情が、そのままギターサウンドとして鳴っています。すなわち、粗削りなサウンドこそがルサンチマンの持ち味であるという事が言えると思います。
「老いても」は、そんなルサンチマンの作品群の中でも特に象徴的な楽曲だと私は考えています。
「老いても」に関しては、タイトルだけ見ると、まるで人生の晩年を歌う曲のようにも思えます。しかし、実際にこの楽曲が描いているのは、”若さのただ中にいる人間が感じる老い”です。
未来へのどことない不安。
時間が過ぎていく感覚。
何者にもなれない焦り。
「老いても」は、そうした感情を真正面から描き出しています。
「老いても」が描く世界──若さの終わりを恐れる感情
”老い”とは年齢のことではない
この楽曲における”老い”は、単純な年齢の話ではありません。
むしろ、
- 大切な人との別れ
- 新鮮な感情を失うこと
- 未来への期待が薄れていく事
そうした精神的な変化の象徴を抽象的に描かれています。
若者は本来、”未来がある存在”として語られています。しかし現代では、その未来そのものが不透明になっています。将来への希望を持ちづらい時代の中で、”まだ若いのに、もう何かが終わってしまった感覚”を抱える人は少なくありません。
「老いても」では、そんな感覚を大切な恋人との別れという面で描きぬいています。老いても君と一緒にいたい。といったニュアンスの甘酸っぱい別れの曲である事が歌詞から分かります。そういった意味では「老いても」は、その感覚を極めてリアルに切り取っています。
タイトルに込められた逆説
しかし興味深いのは、この曲が単なる絶望で終わっていない事です。「老いても」というタイトルは「それでも」とう接続しを内包しています。
老いても、生きる。
老いても、音楽を鳴らす。
老いても、誰かを好きになる。
つまりこのタイトルは、”続いていく人生”への微かな肯定が含まれているのです。
サウンド分析──激情と繊細さを行き来するオルタナティブロック
ギターサウンドが持つ”痛み”
「老いても」のサウンドを特徴づけているのは、鋭くともどこか儚いギターの響きです。歪んだギターは感情の爆発を表現しながら、同時に繊細さを失っていません。個人的な考察ではありますが、これは90年代以降のオルタナティブロックやエモ、さらには日本のギターロック文脈とも接続しています。
しかし、ルサンチマンの特徴は、その影響を単なる模倣で終わらせていないことです。現代的な閉塞感や都市的孤独を含んだ音像として、独自の空気感を作り上げています。
静と動のダイナミクス
この曲では、静かなパートと激しいパートのコントラストが非常に重要です。サビは激しくも温かく、Aメロは静かなパートで構成されています。
小さく呟くようなボーカルから、一気に感情を爆発させる展開。
その落差が、楽曲に強烈な没入感を生み出しています。
まるで「普段は感情を押し殺している人間が、ある瞬間だけ本音を吐き出すような感覚。そのリアルさが「老いても」を単なるロックソング以上の存在にしています。
歌詞考察──未来を信じきれない世代のリアリティ
現代を生きる暗黙の若者文化との接続
現代の若者文化には、”諦め”と”希望”が同時に存在しています。
SNSによって他人の成功が可視化される時代。比較され続ける日常。夢を語ることすら恥ずかしく感じる空気。
そうした環境の中で、「老いても」の歌詞は極めて切実に響きます。この曲は、”頑張れば出会いも人生も報われる”という単純な物語を提示しません。
むしろ、「報われないかもしれない」「でも、それでも生きる」という現実を間接的に描いています。
同棲は割と本気で考えてたのに、
「あなたに迷惑かけられないから、だからさようなら、
だからさようなら」なんて言わないで
引用元:こちら
この一節はとても切ないですよね。20代を生きる若者には共感を呼ぶ歌詞かもしれません。同棲を考えていたカップルが呆気なく別れを切り出す瞬間はある意味ではとてもドラマチックに描き抜かれています。
”もっと一緒にいたい”という希望
だからこそ、「老いても」は暗いだけの曲ではありません。
本当に絶望しているなら、”老いても”という言葉にならないはずだからです。
その先を見ようとしている。
その先にも人生が続くことをどこかで信じている。
その微かな希望こそが、この楽曲の核心です。
今まで辛かったよね、
誰より大変だったね
年は老いても、君は置いていかないよ
引用元:こちら
このような歌詞からして、別の角度でも考察できそうです。「年は老いても、君は置いていかないよ」という歌詞は同音異義語でお洒落ですし、既に相手が年老いて自分の事を分からなくなってしまったという考察もできます。
曲の終盤にこのようなお洒落なギミックを混ぜる姿勢もルサンチマンの実力の高さを物語っています。
なぜ今、「老いても」が響くのか
「老いても」が多くのリスナーに刺さる理由は、この曲が”現代の感情”を正確に捉えているからでしょう。
未来を楽観視しづらい時代。
それでも生きていかなければならない現実。
その中で、
不安を抱えたまま前に進むこと。
完全には救われなくても、生き続けること。
この曲はその姿を、「老い」は「別れ」というカットで真正面から肯定していると考えられます。だからこそ、「老いても」は単なる青春ソングではありません。
若さが終わっていく感覚を知ったすべての人に向けられた、”それでも生きるためのロック”なのです。
いかがだったでしょうか。今日はルサンチマンで「老いても」をご紹介しました。前回の記事もよろしければ併せてご確認ください。
前回の記事はこちら。

音文学管理人。TSUJIMOTO FAMILY GROUP主宰。トラックメイカーでもありながら、音文学にて文学的に音楽を分析している。年間数万分を音楽鑑賞に費やし、生粋の音楽好きである。「私が愛した人は秘密に満ちていました。」大反響を呼び、TSUJIMOTO FAMILY GROUPの前身団体とも言えるスタジオ辻本を旗揚げするまでに至っている。現在新作「突き抜ける群青に泣け。」の制作を開始している。




