相対性理論「ミス・パラレルワールド」徹底解説──歌詞の意味・音楽性・世界観を紐解くライナーノーツ
皆さんこんにちは。音文学管理人の池ちゃんです。大雨のピークは過ぎ去ったみたいで、私が住んでいる所も蝉が鳴き始めました。一旦は一安心かなと思っています。さて、今回も楽曲紹介をしていこうと思います。さて、今回は二回連続になりますが相対性理論さんの名曲「ミス・パラレルワールド」について、徹底解説していこうと思います。私が相対性理論さんを初めて知ったきっかけの曲でとても思い入れがあるので、紹介できればと思います。
ちなみに前回は同じく相対性理論さんで「気になるあの娘」という楽曲を紹介しました。併せてご覧ください。よろしくお願いいたします。記事はこちらから。
目次
相対性理論──はじめに
相対性理論の楽曲「ミス・パラレルワールド」は、その独特な詞世界と音響的なアプローチによって、多くのリスナーを魅了し続けている一曲です。2010年にリリースされたアルバム「シンクロニシティーン」に収録されており、やくしまるえつこさんの透明感ある歌声と浮遊感漂うサウンドが絶妙に融合しております。タイトルから漂うSF的にニュアンス、ミニマルで繊細な楽器構成、そして詩的かつ断片的な歌詞構造。この曲は相対性理論というバンドの特異な存在感を象徴するナンバーと言えると思います。
「ミス・パラレルワールド」というタイトルが示す世界観
パラレルワールドの概念と楽曲の繋がり
「パラレルワールド」という言葉は、私たちが日常で生きる現実世界と並行して存在する、もう一つの可能性の世界を意味します。この曲では、その概念を直接的に説明するのではなく、あえて曖昧なまま描きます。聴き手は歌詞の断片や音の空気感を通じて、自らの中にパラレルワールドを構築していくような感覚に陥る面白い曲だと思います。
やくしまるえつこさんの歌声は現実と夢の境界線を漂うようで、リスナーはまるで別の時間軸に誘われるかのような感覚に包まれます。タイトルがもらたらすSF的な響きと、この浮遊感がリンクすることで、作品全体が非日常的な輝きを帯びています。
音楽的アプローチとアレンジの魅力
ミニマルでありながら緻密な構造
「ミス・パラレルワールド」のアレンジは前回の「気になるあの娘」と同様、派手な展開を避けながらも、細部にまでこだわった音作りが印象的です。ベースラインは滑らかで流れるように展開し、ギターは空間系エフェクトを駆使しながら、リズムの隙間を彩ります。ドラムはタイトでありつつ、時にループ感を感じさせ、楽曲全体を軽やかに支えます。
一見シンプルに聴こえる構成ですが、各パートが繊細に絡みあり、独特のグルーヴを生み出しています。このバランス感覚は相対性理論ならではの魅力であり、同時に聴く度に新しい発見を与えてくれると思います。
やくしまるえつかさんのボーカル表現
やくしまるえつこさんの歌唱は、言葉を淡々と紡ぐようでいて、微妙なニュアンスや息遣いが非常に豊かです。声質は透明感がありながらも温かみを含み、耳に優しく届きます。また、音符と音符の間に漂う”間”の感覚が絶妙で、聴き手はその余白に様々な想像を投げ込むことができます。
歌詞が描く曖昧な物語
断片的な言葉が生む映像美
「ミス・パラレルワールド」の歌詞は、ストーリーが明確に示されるわけではありません。代わりに、短いフレーズや印象的な言葉が連なり、まるで点描画のように情景を浮かび上がらせると思います。この構造は、聴き手が自分なりの物語を組み立てる余地を与えおり、結果として多様な解釈を可能にしていると思います。
ラストのサビに向けた前置きの効果
ミス・パラレルワールドのラストサビ前では下記のような「前置き」のような歌詞が散りばめられています。
あなたはちょっと開けた
わたしの心のドアを
引用元:Uta-Net(こちら)
この「心のドアを開けた」というニュアンスは開けてはならないパンドラの箱を開けたのではないかというちょっとした恐怖感を与えていると思います。もしくは意中の人の心のドアを開けたという解釈もできます。ドアを開けるということで現実と夢の揺らぎも感じられます。この多義性こそが、曲を聴くたびに異なる感情呼び起こす理由なのではないでしょうか。
アルバム「シンクロニシティーン」の中での位置づけ
作品全体との繋がり
ミス・パラレルワールドは、アルバム「シンクロニシティ-ン」の先行配信としてリリースされました。アルバムの「顔」とも言える本楽曲は当時はとても注目されていた記憶があります。その後アルバム「シンクロニシティーン」がリリースされましたが、アルバムの中でも浮遊感や都会的な孤独を象徴するような役割を担っていると考えています。他の楽曲と比べても「パラレルワールド」というより夢と現実の境界を曖昧にするアプローチが際立っていると思います。
ライブでの魅力
本楽曲は2019年にリリースされたライブ音源「調べる相対性理論」でも演奏されています。こちらは公式YouTube及び音楽サブスクリプションで公開されています。
このライブ音源ではアルバムシンクロニシティーンとは違ってギターの音作り的な面でコーラスが深めにかけられています。これはライブという一つの括りとして音作りの統一が図られているためだと思います。また、音のの空間的な広がりがライブ会場の響きと相まって、さらに没入感を高めていると思います。
まとめ:「ミス・パラレルワールド」は聴くたびに異なる表情を見せる一曲
「ミス・パラレルワールド」は、そのタイトルの通り、現実とは異なるもう一つの世界を垣間見せてくれる楽曲です。やくしまるえつこさんの透き通るようなボーカル、緻密で繊細なアレンジ、断片的な歌詞の融合が、聴き手を非日常へと誘います。相対性理論を象徴する一曲として、今後も多くのリスナーに新しい感覚を提供し続けると思います。

音文学管理人。TSUJIMOTO FAMILY GROUP主宰。トラックメイカーでもありながら、音文学にて文学的に音楽を分析している。年間数万分を音楽鑑賞に費やし、生粋の音楽好きである。また、辻本恭介名義で小説を執筆しており処女作「私が愛した人は秘密に満ちていました。」大反響を呼び、TSUJIMOTO FAMILY GROUPの前身団体とも言えるスタジオ辻本を旗揚げするまでに至っている。




